【1987、ある闘いの真実】韓国の一時代を圧倒的な質量と密度、そして凄まじい熱量で描いた社会派の傑作!
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タイトル:1987、ある闘いの真実
ジャンル:ノンフィクション / ドラマ / 社会
日本公開:2018年
製作国 :韓国
監督  :チャン・ジュナン
出演  :キム・ユンソク / ハ・ジョンウ / キム・テリ

 

あらすじ
1987年、軍事独裁政権下にあった韓国。
市民や学生のデモ隊と政府が激しく衝突する中、一人の大学生が警察の取り調べの最中に拷問により死亡した。
その事実を隠蔽し病死として処理しようとする警察だったが、それに不信感を抱いた検事や記者が国家権力に抵抗を始める。
国を変えるために立ち上がった人々を描いた実話。
というお話し。
メタ壱スコア 4.7
普段パンフレットを買わない僕ですが、この作品の圧倒的な良さに鑑賞後パンフレットをかっちゃいました、ぐらい良かった!
今年の僕の年間ベスト10に入る事間違いなしな作品です!
いや〜、熱かった!

1987年の韓国

この作品「1987、ある闘いの真実」は韓国の軍事独裁政権時代に起こった実際の事件を元にした社会派の作品です。
タイトルの通り時代は1987年。
1987年と言えば今からたった30年くらい前なわけです。
当時僕は4歳くらいだったのですが、その頃にこんな事がすぐお隣の国・韓国で起こっていたなんて知りませんでしたし、知ったのもほんの少し前です。
この時代を舞台にした韓国映画といえば2012年に日本でも公開された「サニー 永遠の仲間たち」がありますね。
この作品でも治安部隊と市民隊が衝突する場面が描かれていましたし、主人公・ナミの兄がデモ活動に参加していました。
また最近の作品だと、1980年の韓国で起きた「光州事件」を描いた「タクシー運転手」という映画も衝撃的な作品でした。
「1987、ある闘いの真実」と「タクシー運転手」は共に軍事独裁政権と市民の闘いという同じテーマを扱っているのですが、描き方に違いがあります。
「タクシー運転手」はタクシー運転手である主人公を中心に話しが進んでいき彼の目線を通して光州事件が描かれていきます。
しかし「1987、ある闘いの真実」には特定の主人公はおらず、検事、新聞記者、普通の学生など様々な人々の目線を通して当時の事件が描かれていきます。
「タクシー運転手」がミクロな視点で描かれた作品であるのに対し、「1987、ある闘いの真実」はマクロな視点で描かれた群像劇というわけです。
ですので、両作を併せて観る事で当時の韓国を立体的な視点で見る事が出来ると思います。

 

熱は伝わる

僕は地方に住んでいるので、地元の劇場では本公開より一週間遅れての上映となりました。
この時間差がなんとも歯がゆいのですが、なんとか地元の映画館で公開されてから4日後に観る事が出来ました。
僕がこの作品を観た時の他のお客さんは10数人ほどでほとんどが50〜70代の方々でした。
映画終盤、僕の前に座っていた70歳前後の男性が涙を拭いながら作品を観ていました。
このくらいの年代の人は全共闘世代で、日本の70年代前後に起きた学生運動等を見てきた世代だと思います。
その時代の出来事と今作は共通する部分があるので、そういう世代の方たちの琴線に触れたのかなと思いました。
一方で現在30代の僕はそういう世代の出来事を経験していませんし、映画等で観て知っていてもその頃の空気や価値観などはイマイチぴんときません。
なのに、何故か心に響く作品なんですよね。
というか、学生運動的な事に何故か心が熱くなるんです。
加藤登紀子さんの名曲で映画「紅の豚」のエンディングテーマである「時には昔の話を」を聴くとグッときます(笑)
僕には特別、政治的な思想もありませんし、なんだかんだ平和な時代しか知らないのに。
なんでだろうと考えてみると理由は恐らく“熱”。
強い意志と信念を持った人達のその“熱”に感化されるのだろうと思います。
何かに熱くなるというような事がなかなかない現代の僕はそれらをある種羨ましく思っているのかもしれません。
そんな“熱”がこの作品には強く込められていて、僕の心を震わせた一つの要因になっていると感じました。
世代も思想も超えて、人の感情の“熱”は伝わるものなのだなと思います。

©2017 CJ E&M CORPORATION, WOOJEUNG FILM

 

社会派かつエンターテイメントな作品

本作は1987年に韓国で起きた実際の事件をベースに作られた社会派作品です。
というと、なんだか敷居が高い作品なように感じる人もいるかもしれません。
しかし実際にはエンターテイメントとしても良くできた作品となっています。
こういう作品に対して「泣ける映画」という評価をする事にはかなりの抵抗がありますが、実際に僕は劇場で号泣してしまいました。
音が途切れた場面で「ヒッ」と軽く嗚咽が漏れてしまって恥ずかしかったです(笑)
ただ、泣けるといっても悲しいとツライとか、イイハナシとかそういう“単純な感動”ではないんですよね。
なんというか、腹の底から何か熱いものが湧き上がってくるという感じ。
強い想いを持った人間の感情に、映画を観ている側の人間の感情が引っ張り上げられる感覚。
先にも書いたような、まさに“熱”。
そんな、“感動”と言ってしまうと陳腐なになってしまうような複雑な感情になるのです。
それはこの作品が緻密に作られているからです。
本作には沢山の登場人物がいます。
下手をすれば各登場人物の描写が薄くなったりしてしまいそうですが、この作品では登場人物一人一人がしっかり描かれています。
群像劇ですので、ともすれば要素として表面的にしか描かれなさそうな一人の人間の死というものも丁寧に描かれています。
そういった丁寧な描写の積み重ねがこの作品を重厚な物にしているのです。
また、警察と市民が衝突するシーンなどの映像の凄い迫力も相まって心を強く揺さぶられます。
当時の韓国の事を知らなくても、社会問題に興味がなくても、この作品に込められた圧倒的な熱量はきっと観た人の心を強く揺さぶるのではないかと思います。
この作品を観たのをきっかけに当時の韓国に興味を持つ人もいるのではないでしょうか。

©2017 CJ E&M CORPORATION, WOOJEUNG FILM

 

ニ段構えで描かれる秀逸なシナリオ

この作品はストーリーが進む内にその性質が変化していきます。
物語りの始まりは一人の大学生の死を警察が隠蔽しようとするサスペンス的な始まり方をします。
そこから、それに不信感を抱いた検事や記者達と彼らに圧力をかけようとする国家権力との闘いが始まります。
しかし、この映画では単にその陰謀を暴くという部分に終始しません。
先述したようにこの作品は多くの人の視点から描かれた群像劇です。
一人の検事の行動から始まった義憤のバトンは様々な立場の様々な想いをもった人々に受け継がれていきます。
そうしてそんなバトンが受け継がれていくうちにサスペンス的だったストーリーはいつしか圧倒的なまでのヒューマンドラマへと昇華されるのです。
こういったストーリーの持って行き方がとても秀逸で、それがこの作品のエンターテイメント性の高さにも繋がっています。

©2017 CJ E&M CORPORATION, WOOJEUNG FILM

 

作り手の信念

この作品を作るにあたってはかなりの困難があったと監督がインタビューで語っています。
制作開始当時、韓国は保守政権でしたから、こういった内容の作品は上から圧力がかかってもおかしくないですよね。
というか、実際に圧力があったそうです。
ですから制作も慎重に行われ、役者さんのキャスティングもはじめ水面下で行われたといいます。
実際、後に明らかになった政府の反政権的な文化人を記したブラックリストにチャン監督の名前があったそうです。
そんな中でも監督はこの作品を作らないといけないという使命感のもとこの作品を完成させました。
また、自らの不利益も覚悟の上で監督に賛同しこの作品に出演した役者さんたちも素晴らしいと思います。
そういった覚悟や信念はまさにこの映画の中で描かれている国家権力と闘った人々と重なります。
作り手に強い想いがあったからこそこの作品を骨太なものへと作り上げる事が出来たのだと思います。

 

 

⇩ここからネタバレ⇩

この作品に出演している役者さんたちは名優ばかりです。
その中でも僕が感動したのは、イ・ハニョル役のカン・ドンウォンさんの表情の演技です。
映画のラストで催涙弾の直撃を受け意識を失っている表情が凄かった。
リアルというか・・・ちょっと言葉では表現し辛いのですが、その迫力に胸が苦しくなるほどでした。

まとめ

僕は最近までお隣の国である韓国でこんな事があったと言う事を知りませんでした。
しかも割と最近の出来事なのに。
この作品を通して、世界で起きている事って知らない事が多いと言う事を再認識しましたし、僕以外にもそういう人って多いんじゃないかと思います。
それは韓国の事だけではなく、例えばベトナム戦争やカンボジアの内戦もそうですし、ナチス・ドイツの事なども知っているようで実はよくわかっていなかったりします。
こういう知らない事を知れるというのも映画のいい所ですよね。
こういう社会派作品が好きな人にはもちろん、普段こういう作品は難しそうだし堅そうだから観ないという人でもきっと満足出来る作品になっていると思うので食わず嫌いをせずにぜひ一度観ていただきたいと思います。

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