【青の帰り道】夢と現実と、もう戻れないあの頃。
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青の帰り道
ジャンル
ドラマ / 青春 日本公開2018年12月7日 製作国日本 上映時間120分 監督藤井道人 出演真野恵里菜 / 清水くるみ / 横浜流星
あらすじ
2008年、東京の近くの田舎町の高校に通う7人の仲間たち。
高校の卒業を迎えそれぞれがそれぞれの夢を追い求め違う道を歩み始める。
しかし、そんな彼らは社会の現実と向き合ううちに疲れ、挫折し心を擦り減らしてゆく。
こんな人にオススメ!
●青春映画が好きな人。
●かつて青春を過ごした大人の人。
●社会の現実に疲れている人。

夢と現実と、もう戻れないあの頃。

©映画「青の帰り道」製作委員会

「青の帰り道」
この作品は2016年に撮影が開始されたのですが、同年に起きた役者の不祥事により撮影が中断されてしまいました。

しかしスタッフやキャストには、この映画を絶対に完成させたいという強い思いがあったそうです。

そして、この作品は夏でなければ撮影出来ないという理由から翌年の夏に再び撮り直し撮影が開始され、スタッフ・キャストの思いがついに実り2018127日に全国公開されました。

それ程にスタッフやキャストの強い思いの詰まった映画ですので僕も期待していたのですが。

その期待を大きく上回る程の素晴らしい作品でした!

物語りは、同じ高校に通う7人の男女が学校を卒業しそれぞれの夢に向かって別々の道を進んで行き、社会の苦しい現実を前に必死に生きていこうとする10年間を描いた青春群像ストーリーです。

しかしこの作品、かなり重い
青春モノと言えば切なくて甘くてほろ苦いキラキラしたストーリーを想像しがちですが、本作は社会の現実の苦しい部分をリアルに描いていて、観ていて辛くなる場面がかなり多かったです。

高校時代、あれだけ仲の良かった7人はそれぞれ違う夢や目標に向かって歩きはじめそれぞれの苦しい現実と向き合い、次第に7人は進む道だけでなく心まで噛み合わなくなっていきます。

こういう事って観客である僕達の多くも経験をしているのではないかと思います。

仲の良かった友達といつの間にか疎遠になったり、人生が上手く行っている友達になんだか置いていかれたようで妬ましい気持ちになったり。
そうやって少しずつ心が離れいつの間にかギクシャクした関係になっていたり。

僕は7人の主要登場人物の中で特に清水くるみさん演じるキリと、森永悠希さん演じるタツオに感情移入して観ていました。

キリとタツオの、自分に自信がなくメンタルが弱い所に感情移入したのかもしれません。

そんな訳で僕はキリとタツオに感情移入していたのですが、この作品には特定の主人公はいなくて、7人に交互にフォーカスがあたる群像劇なので、多くの人がそれぞれ個性の違う主要登場人物の誰かに感情移入が出来るのではないかと思います。

もうお気づきかもしれませんが、この作品は青春映画ではありますが、今青春の真っ只中にいる人よりも、かつて青春を過ごした人達に向けた作品なんです。

もちろん、現在青春真っ只中の人にも感じるものは多い作品だとは思いますが、やっぱり一番は青春を通り過ぎ大人になった僕たちのための作品だと思います。

彼らと同じような経験はなくとも同じような気持ちを味わってきた僕たちの、心の奥に仕舞い込んでいたあの頃の名状しがたい、あの頃にしか味わえない気持ちを引きずり出され胸が締め付けられます。

そんな登場人物達の気持ちを丁寧に描いている本作ですが、それだけではなく映像にも大きなこだわりを感じました。
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シーン1シーンがとても丁寧に作られていて、光の使い方だけでもキャラクターの心情が伝わってきます。

そんな丁寧な作りに、一度は中断した作品をこうして完成させたスタッフやキャストのこの作品に対する想いや熱がこれでもかというくらいに詰まっているのが感じられるんです。

映画が終わって劇場を出たとき僕は、なんだか長くて切ない夢を見ていて、目が覚めると一筋の涙が頬を伝っていた、、、そんなような不思議な気持ちに包まれていました。

僕が住んでいる場所は地方で、201812月に公開された本作を20192月にようやく観る事ができたのですが、もしこの作品を去年のうちに観ていたら間違いなく「2018年マイベスト10」に入っていたでしょう。

映画のチラシを見て、「なんだキラキラした感じの青春ものか〜」と思った人もいるかもしれませんが、むしろこの作品は大人になったそんなあなたにこそ観てほしい作品です!

たくさんの苦しさの詰まった「青の帰り道」ですが、作品全体が薄い膜の様な優しさに包まれているような気がしました。

だから作中に好きになれないキャラクターがいても、映画を観終わった後には7人全員がなんだか愛おしくなっている、そんな素晴らしい映画でした。

 

©映画「青の帰り道」製作委員会

本当に素晴らしい作品でした。

物語りの構成もとても良くて、7人の人生と気持ちが少しずつ噛み合わなくなっていく様子が丁寧にそしてリアルに描かれていました。

高校を卒業してすぐに結婚したコウタとマリコ。
僕ははじめこの二人の結婚に「あ〜、こんなに早く勢いで結婚しちゃって〜。これで夢も追えなくなるやん〜、やっちまったなー」と思ったのですが、この映画の中で大きな苦難に直面する事なく幸せな10年を過ごしてきたのは、地味だけど穏やかに生きてきた彼らだけでした。

夢を追ったカナはその代償とも言えるような大きな挫折に打ちひしがれる事になりました。
とにかく何か大きな事をしてビッグになりたかったリョウは犯罪を犯し道を外れました。

まだ世界を知らない高校時代の彼らは無邪気に夢を語り合っていましたが、現実にはそれにみあったリスクや代償がともなうわけです。

そうやって現実に苦しみもがく7人の気持ちをとても丁寧に描いていたのが印象的でした。

特に印象的だったのがキリの気持ちを映像として描いた2つのシーン。

一つは、詐欺師の恋人と別れカナの言葉に深く傷ついたキリが実家に戻る電車のシーン。

このシーンでは電車の中から窓の外の景色を映しているのですが、その風景が都会の景色から田舎の風景へとじょじょに変わっていきます。

その描写がとても優しい。
映画を観ている僕にも張り詰めたキリの心が少しずつ解きほぐされていくのが凄く伝わってくるんです。

僕も一人暮らしの家から実家に電車で帰るという経験を何度もしているのですが、電車の窓の外の景色が少しずつ見慣れた田舎のものに変わって行く時に心が解きほぐされていくような安心感を感じていました。

そんな経験から、そのシーンで僕はキリとその安心感を共有していたのです。

そして2つ目のシーン。
それはキリの家の中の光の描写です。

家族の中に居場所がないと感じていて、家がキライだった時の高校時代のキリ。
その頃の家の中のシーンでは、家族が集まる食卓は暗く赤い光で描写され、そこがキリにとってとても居心地が悪い空間である事が表現されていました。

しかしキリが東京から戻って来た時、同じ場所であるはずの家の中は窓が開け放たれ明るく優しい光に満ちていました。

高校時代のキリにとって家は居心地の悪い場所だったのが、東京から戻って来たキリにとっては優しく自分を受け入れてくれる安心出来る場所だと言うのが光の使い方によってとても上手く表現されていたのです。

こういった細部まで行き渡った監督のこだわりに、この作品に対するスタッフ・キャストの強い想いが宿っているように感じられました。

 

 

メタ壱スコア:4.6

この映画のラスト、僕はボロボロ泣いていました。

この作品は一般的に言う泣ける映画ではないと思います。

でも僕はボロボロ泣いていました。

この映画によって僕の中の色んな感情が引き出され、それと一緒に涙も引き出されてしまったような感覚。

ただ泣ける映画よりも、こんな感覚で涙が出てくる作品が僕は大好きです。

ただ近くの席の人に鼻をすする音が聞こえないか心配で心配でちょつと恥ずかしかったです(笑)

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