【夏、19歳の肖像】台湾×日本×中国 + ミステリー×青春!
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タイトル:夏、19歳の肖像
ジャンル:ミステリー / 青春
日本公開:2018年
製作国 :中国
監督  :チャン・ロンジー
出演  :タオ / ヤン・ツァイユー / リー・モン

 

 

あらすじ
大学生のカン・チャオは夏休みのある日バイク事故を起こして入院してしまう。
退屈な入院生活だったが病室の窓から見える向かいの邸宅に美しい女性が住んでいるのに気付き恋に落ちる。
友人から借りた望遠鏡で彼女を眺めるのを楽しみにしていたチャオだったが、ある日その女性が父親らしき男性にナイフを手に飛びかかり邸宅隣の工事現場に埋める光景を目撃してしまう。
その後退院したチャオはその女性に接近するが正体不明の何者かから脅迫めいた手紙やメールが届くようになる。
というお話し。
メタ壱スコア 3.4

この作品は制作は中国ですが、「占星術殺人事件」や御手洗潔シリーズなどで有名な日本人ミステリー作家である島田荘司の同名小説を原作に、映画「共犯」などを監督した台湾人監督であるチャン・ロンジーにより実写映画化された作品です。
チャン・ロンジー監督の前作「共犯」もそうだったのですが、ミステリーがベースでありながらその軸には“青春”というテーマがあります。
前作同様、彩度を抑えた透明感のある映像美と青春というテーマが独特な世界観を造り出しています。
僕はこれまであまり台湾映画を観た事がないのですが、他の台湾作品もそんな感じの画作りだったので、もしかしたら台湾映画独特の透明感のある表現なのかもしれません。
例えば韓国映画も独特な色彩表現がありますよね。
台湾のこの透明感の表現、僕は凄く好きです。
それに加えてミステリーと青春という組み合わせが僕にとってどストライクでした!
ところでこの映画のポスター、「桐島、部活やめるってよ」のポスターに似てると思いませんか?
どこかでチャン・ロンジー監督が桐島ファンだと聞いたことがあるので、もしかすると同じ青春モノとしてオマージュしたのかもしれませんね。

個人的に青春モノって、同じく現在進行形で青春を送っている若い人たちよりも、かつてその時代を経験した大人の方が楽しめるんじゃないかなと思っています。
昔の感覚を思い出してほろ苦いというか、胸がキュッとなる感じ。
それをミステリーという非日常的な出来事を通して描く事で青春時代独特のあの感情をぐっと浮かび上がらせます。
この作品の主人公・チャオは周りが見えていないというか感情的に行動するところがあり、それはまさに青春時代のそれですよね。
感情に素直な幼い行動にオイオイと思いながらも、大人になってからは出来ないようなそんな行動を代行してくれているようでもありつい昔の自分を重ねて切ないような甘酸っぱいような気持ちになってみたりするわけです。

© 2016 DESEN INTERNATIONAL MEDIA (BEIJING) CO., LTD.

また、主人公が恋をする女性・インインは黒髪ロングに清楚な顔立ちでどこかミステリアスな雰囲気があります。
名前も知らない窓越しに見つめるだけの美しい女性。
そんな彼女の存在が思春期の男子の憧れの女性像を体現しているようです。
僕は昔からアーティストのZARDのボーカルである坂井泉水さんの大ファンなのですが、坂井さんも表にはあまり出ずそのミステリアスな存在感が人気の理由の一つだったと思うのですが、今作のインインにもどこか通じるところがあります。

始めはそんな彼女を遠くから見つめているだけだったチャオですが、一つの“事件”が起こる事で彼らの日常は崩れていきます。
そして抗い難い運命に直面し、しかしそんな中でも必死に恋をするチャオのたった一度の19歳の夏が鮮烈に描き出されます。
この抗い難い運命というのが、自分たちの思い通りにならなかったあの青春時代と重なるようでもあります。
ミステリーというジャンルは人間の本質のようなものを描くのにとても有効だと思っています。
例えば、ミステリー✕愛をテーマにした名作「容疑者Xの献身」も大好きな作品です。
このような“ミステリー✕〇〇”のように、事件を通して人間を描いた作品が好きな方にはうってつけな映画だと思います。

© 2016 DESEN INTERNATIONAL MEDIA (BEIJING) CO., LTD.

僕が住んでいる所は地方なので日本での本公開からは少し遅れて劇場公開されたので夏ではなく秋になってしまいました。
ですが、この作品に関しては夏真っ盛りよりも、夏の終わりに観るのが合っているなと感じました。
そういう意味で今はむしろ丁度いいタイミングだったかもしれません。
もし、まだ観ていないけれど興味があるという方は是非この夏の終わり、秋の始まりの今劇場でご覧になられてはいかがでしょうか?

 

 

⇩ここからネタバレ⇩

真相を整理

この作品には主に二つの大きな謎が存在しました。
「インインの起こした事件の真相」そして「チャオに送られてくる謎のメールの送り主の正体」。
ラストで一気にその謎が解き明かされていくわけですが、とりあえずここで一度この物語りの真相を整理してみたいと思います。

インイン宅で男性(インインの父親だと思っていたが実は旦那だった)が病気で倒れる。
その時、男性を支えようとしたインインは手に包丁を持っていたため、それを向かいの病院の窓から望遠鏡越しに覗いていたチャオが刺殺したと勘違い。

こぼれた飲み物のシミを消すためにクリーニング屋に出したカーペットの事も血を消すためだと勘違い。
同時に、チャオに想いを寄せていた女友達のリーはチャオの望遠鏡にカメラを仕込んでいてチャオの見ていたのと同じ光景を見てチャオ同様殺人事件だと勘違い。

また、インインは男性との間に出来た子供を生後1ヶ月で亡くしていて、見るのもつらくなった子供の遺品を自宅隣りの工事現場に埋める。
チャオはそれを男性の死体を埋めていると勘違い。
実際には男性は療養の為に別の場所へ送られていた。

そんな事は気にしないとばかりにチャオはインインに急接近。
それを阻止する為にリーは正体を隠しチャオに脅迫めいた手紙やメールを送る。
それはそれこれはこれといった具合いにチャオは更にインインに接近し仲を深め、二人は逃避行に出る。

インインの結婚は父親の借金が原因で、それは彼女の望んだものではなかった。
インインにとって二人の逃避行は、そんな現実から逃れるための一時の夢の様な時間だった。

そんな二人を引き裂くためにリーは遺棄された男性の死体を発見させインインを逮捕させようと警察に通報する。
しかし事前に死体を確認しようと穴を掘り返してみるが男性の遺体は埋められておらず、そこにあったのは子供用品だけ。
これじゃ騒ぎにならないからと、病院から赤ん坊の遺体の標本を盗み出しその穴の中に埋める。
が、大した事件性はないものと警察は判断し結局大事には至らない。

最終的にインインの口からチャオへ事の真相が語られ、インインの置かれた状況と男性の正体が判明する。

というのが、この映画の大まかな真相です。
つまりこの“事件”は登場人物たちの誤解や嫉妬が空回りし絡み合ってこじれてしまっただけで、実際にはほとんど事件という事件は起こっていなかったわけです。
・・・むしろ思い返してみると一番“事件”的な事を起こしているのは主人公なんですよね(笑)
インインがしたのは子供用品を埋めるという不法投棄くらい。
リーはそれよりは少しレベルが上がって、望遠鏡にカメラを仕込んでの盗撮と病院から赤ん坊の遺体の標本を盗んだ窃盗。
あとは監視アプリでのストーキング行為くらいでしょうか。
手紙やメールは脅迫ってほどの内容でもなかったですし。
それらに比べると主人公・チャオは色々やっちゃっています!
まずはインイン宅に対する覗き行為。
そして、インイン宅へ不法侵入した挙げ句に窃盗(押し花のようなもの)!
さらにはインインに対するストーキング行為!
その後、インインに対するメッセージとして工事現場の看板にバタフライの落書きをします。
そして最後に、インインを乗せた車の行く手を阻む為に車の前にバイクを転倒させるという危険運転!
チャオはずば抜けて色々やっちゃってるわけです(笑)
特に家宅侵入のあたりなんかは映画を観ていてドン引きするほどでした(笑)

しかし、その周りをかえりみない猪突猛進な行動こそ青春時代の男子をよく表してるとも言える気がします。
実際にそういう事はしていなくても、なんとなくチャオの気持ちが解るのは僕だけではないはず!
そして、自分の中で勝手に考えて妄想して、結果それが空回りするというこの作品全体の構図そのものがまさに思春期の僕たちを表現しているという感じがします。
それにしてもやり過ぎ感は否めませんが(笑)

 

表現力の向上に期待

この作品の構図や雰囲気、特にミステリー✕青春というのは僕の大好物であります。
しかし、「共犯」の時も感じたのですが、若干の表現力不足を感じました。
なんというか、大事な所が薄味になっているという印象。
例えば、僕がこの物語りで一番大事なパートだと思うのはチャオとインインの逃避行の所です。
この逃避行はインインにとって、初めて自分の意志でもって起こした行動であり、ずっとは続かないと解りながらも現実から逃れる事が出来た夢の様なひと時だったわけです。
なのでこのパートがラストの真相が解った所でズシンと重みをもって効いてくるのですが、その逃避行の描写部分がちょっと薄味に感じました。
もっとその他のパートとの差をつけたり印象に残るエピソードを盛り込んだりして際立たせて欲しかったです。
真相が解った時にその時の事を思い出して心がギュッとなるような感じがあまりなかったんですよね。
ここがしっかり描かれていればこの作品のテーマに何倍も重みを持たせる事が出来たのではないかと思い、惜しい気持ちになりました。

また、チャオに密かに想いを寄せ、その嫉妬のために脅迫めいたメールを送っていたリーですが、彼女の存在や内面をもう少し掘り下げて欲しかったです。
彼女もまた恋を前に思春期を拗らせてしまっていて、もう一人のチャオとも言える今作のテーマにおいて重要な存在になりえたキャラクターです。
もちろん、ミステリー部分においては重要な存在です。
しかし、重要な存在になりえたはずの彼女の内面はほとんど描かれずただのストーカーのようなキャラクターになってしまっています。
なんならリーという存在と脅迫メール関連のエピソードはなくてもこの映画は成立してしまうんじゃないかというくらいに彼女の扱いが軽いと感じました。
リーという存在をもう少ししっかりと描いてチャオとインインの恋愛に上手く絡める事が出来ていればこの作品はもっと深い作品になっていたのではないかと思います。

しかし、僕はチャン・ロンジー監督のこの作品や前作の「共犯」の雰囲気やテーマ、青春とミステリーの描き方がとても好きです。
今作はチャン・ロンジー監督にとってまだ3作目の映画ですし、年齢も38歳(2018年現在)と若いかたなのでこれから先どういう風にチャン監督の作品が洗練されていくのかとても楽しみです。
これからもチャン・ロンジー監督の作品をチェックしていきたいと思います!

 

まとめ

本作に若干の物足りなさは感じたものの、本トータルで見て僕にとって好きな作品になりました。
日本では台湾映画(今作は正確には中国制作で監督が台湾人)ってあまり馴染みがないと思いますが、この作品をきっかけに多くの人に台湾映画の良さに触れてみて欲しいなと思いました。
僕もこれからいろいろな台湾映画を観て行きたいと思っています。

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