境界カメラ ナリモトD失踪事件・結
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2016年2月。
プロデューサー・有馬顕の元に“アダルトビデオに上書きされた不気味な謎の映像”が送られてきた事からすべては始まった。

ホラービデオ制作の現場において特段珍しくはないはずの一本のビデオテープが多くの人間とその人生を翻弄する事になるとは誰にも予測できなかっただろう。
なぜならこの一連の事件は決して一人の人間の意志によってもたらされたものではなく、これらに関わった多くの人間の思惑、悲しみ、怒り、情熱、そして想いによって紡がれた奇跡のような事件だったからだ。

そして3年半後の2019年8月2日、DVD「境界カメラ4」の発売をもってこの物語は幕を下ろした。
そうしてたどり着いた事件の終わりと、関わった全ての人々のそれぞれの終幕。
そんな彼らとこの事件について、「ナリモトD失踪事件」を僕からみたそれぞれの物語として語ってみようと思う。

 

ご注意:この記事には「境界カメラ ナリモトD失踪事件」の真相に触れる内容が含まれています。

1有馬顕

有馬は守銭奴である。

前作にあたる「ほんとうに映った!監死カメラ」シリーズの頃から彼は常にお金の事を口にしていたし、「ナリモトD失踪事件」の捜査もお金の問題で一年間という長期間にわたる休止を余儀なくされた。

それに加えてポーカーフェイスな有馬はクールでどこか冷めた印象がある。

そんな彼は寺内を応援する者にとって、寺内のスカートの裾を踏んでいるような存在に見えたのかもしれない。

しかし、この一連の事件はそんな有馬の普段表に出さない静かな熱“青い炎”をも浮き彫りにする事となった。

ナリモトDと共に行方不明になったはずのビデオテープとUSBメモリが田中花子名義で有馬の元に届けられた時、彼は何を思ったのかは僕には解らない。

その不可解な事態にビジネスチャンスの匂いを感じたのか、いなくなったナリモトDを心配したのか、純粋に好奇心を刺激されたのか、その全てかもしれないし、全て違うのかもしれない。

有馬顕という男は、それ程に感情の読み取れない男なのだ。

しかし僕は彼がただのクールな男では無い事を知っている。

いや、それは僕だけではなく長い年月をかけて「境界カメラ・ナリモトD失踪事件」を観てきた多くのリスナーが感じていたに違いない。

彼は一度もナリモト事件の捜査が打ち切りだとは言わなかった。

彼は休止状態の中一巻のDVDを発売した。

彼は境界カメラチャンネルをやめなかった。

彼は寺内やリスナーの思いを受けナリモト事件を復活させた。

そして彼はリスナーの事を“共犯者”だと言ってくれた。

その“熱”は捜査再開の時の有馬らしくない寺内との握手という形で表れていたと僕は思う。

全ての事件が解決した今有馬はこの3年間の事をどう思っているのか。
きっと彼はそれを雄弁には語らないだろうし、例えそれを尋ねたとしてもいつもの飄々とした態度で本心を語る事はないだろう。

しかし、今回の事件が無事解決を迎える事が出来た、その立役者の中に有馬顕の存在は間違いなくあるのだ。

 

2イカワ

少年。

それが僕の中でのイカワのイメージだ。

イカワは結果としてナリモト事件を引っ掻き回し、事件をより複雑にしたある種のトラブルメーカー的な存在として多くの人間の記憶に残る事となった。

全てが解決した今だからこそわかる事ではあるのだが、この事件解決の最短ルートは、
イカワが真実を話し、すぐさま寺内がナリモトに会う。

ナリモトの身に怪現象が起きるようになるきっかけとなった廃墟を調べる。

キリタニの存在を知り行方を探す。

解決\(^o^)/

このたった3ステップで真相に辿りつけていたのだ。

しかし、イカワがナリモトの現状について嘘をついた事で捜査は混乱し長期化した。

どころか、寺内らに直接捜査の方針を提案すれば良いだけだったはずなのに、Youtubeに謎の動画を上げるという意味不明な行動までとるという始末。
自費で。
すぐに見破られる詰めの甘い。
お疲れ様でした。

しかし今になって振り返ってみると、彼の愚かとも言える行動には一つの想いに裏打ちされたイカワの人間性がみてとれる。

それは友人であり仲間でもあるナリモトに対する優しさだ。

イカワは常にナリモトの事を中心に考え行動していた。
もっと事態を俯瞰的に見ていればよりスマートな解決方法があったはずだけれど、彼は目の前のナリモトにフォーカスし過ぎた。

でもやっぱりそれはイカワのナリモトに対する優しさ故だった。

その友達を思って周りがよく見えなくなる優しさと、時折彼が見せたイタズラっぽい笑顔はまさに“少年”のそれであると僕は感じた。

多分イカワという人間の心の奥にあるのはタピオカの様に丸くてプニプニとした柔らかい無垢な優しさなのだと僕はある程度確信している。

余談。
この事件において島田とキリタニの不思議な友情関係を僕たちは知る事となったわけだが、ここにも一つの男と男の物語があったのだ。

イカワ・ナリモト=島田・キリタニ。

この四人が揃って天一のラーメンを仲良くすすっている姿を僕は想像し、いつか本当にそんな日が来ないかと密かに楽しみにしている。

 

3谷もも

この事件の中で“心霊獄門帳メンバー”の一人として中心的な位置にいたものの、あまり前に出てくる事のなかった谷。

彼女の立場からするとこの事件は、一緒に仕事をしていたナリモトディレクターがいなくなってしまい映像制作の仕事が打ち切りになってしまったという部分が全て。

イカワのように以前からナリモトと友人関係にあったわけでもなく、有馬に対しての義理もなかった。
たまたま依頼された心霊ドキュメンタリー作品のアシスタントを担当していたに過ぎない。

その後、事情により事件の調査が休止状態になっている間に谷は女子プロレスラーとして活躍をはじめた。

完全に別の方向へと進む道の舵をきった彼女には、もはやこの事件の結末など気にする必要はなかったはずだ。

だけど谷は長いブランクの後も“心霊獄門帳メンバー”として戻ってきてくれた。

思い返すと初めて谷が境界カメラのカメラの前に姿を現したのは2017年8月のチャンネル生放送の時だった。

この日谷はずっと隠してきたナリモトによる“ヤラセ”を寺内によって暴かれた事に悩み涙を流しながら全てを白状したのだった。

それはやはり彼女には獄門帳メンバーとしての強い自覚と信頼関係があったからではないか。

だからその思いを共有していたイカワは自らが作ったYoutubeの偽心霊動画に「gs」という名前をつけたのだと思う。

「gf(がんばれ二人)」でもなく「gn(がんばれナリモト)」でもなく「gs(がんばれ三人)」とイカワは谷も含めた獄門帳メンバーである自分たちを激励する思いを込めたのだ。

島田への初取材の時に見せた前のめりな姿勢は、自分もこの事件の中心にいたのだという谷の強い自覚と自負の表れに違いなかった。

 

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