【ウインド・リバー】なぜ、この土地では少女ばかりが殺されるのか・・・。アメリカが内包する深い闇。
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タイトル:ウインド・リバー
ジャンル:ドラマ / ミステリー
日本公開:2018年
製作国 :アメリカ
監督  :テイラー・シェリダン
出演  :ジェレミー・レナー / エリザベス・オルセン / ジョン・バーンサル

 

あらすじ
アメリカ中西部のワイオミング州にあるネイティブアメリカンの保留地“ウインド・リバー”。
野生生物局でハンターをしているコリーはある日雪原で一人のネイティブアメリカンの少女の遺体を発見する。
3年前に同じような状況で娘を亡くしていたコリーはFBIから派遣された捜査官・ジェーンと共に捜査を開始する。
そして“少女ばかりが殺害されるウインド・リバー”で二人はアメリカという国が孕む闇に足を踏み入れていく・・・。
という事実を元にしたお話し。
メタ壱スコア 3.7

第70回カンヌ国際映画祭の〈ある視点部門〉で監督賞を受賞した本作。
日本で2018年7月に公開された作品なのですが僕の住む地域では上映している劇場がなかったので泣く泣く諦めていたのですが、11月に入り地元のシネコンが上映してくれる事がわかり早速観に行ってきました!

この作品はストーリー的には凄くシンプルなのですが、その中でアメリカが内包する“闇”を鋭く描き出しています。
ただ、アメリカの抱える問題を描いている作品なのである程度事前知識がないといまいちピンと来ないかもしれません。
と言う事で最低限知っておいた方が良い事を少しご説明しておきます。

© 2016 WIND RIVER PRODUCTIONS, LLC.

この作品の舞台となる“ウインド・リバー”という土地。
“ウインド・リバー”はアメリカ中西部のワイオミング州にあるネイティブアメリカン保留地の一つの名前です。
保留地とは、アメリカ合衆国内務省BIA(インディアン管理局)が管理しているネイティブアメリカン(インディアン)の土地の事です。
かつて白人がアメリカ大陸を開拓するにあたりもともとそこに住んでいたネイティブアメリカンを保留地であるウインド・リバーへと追いやりました。
しかしウインド・リバーは極寒の地で産業は発展せず現地で暮らすネイティブアメリカン達はとても苦しい生活を強いられてきました。
しかも鹿児島県ほどの広さがあり約2万人の先住民が住むこの土地であるにも関わらず警察官が6人しかいないという状況。
「ウインド・リバー」の公式サイトの文章に、
「なぜ、この土地(ウインド・リバー)では少女ばかりが殺されるのかーー」
とあるように、この地では多くの事件が起きています。
そしてそれらは“野放し”の状態にされているのです。
まさに見捨てられた土地と言えるのではないでしょうか。
この辺りの事は劇中ではあまり触れられない為、以上の事を頭に入れておくと観やすいと思いますし、更に詳しく調べておくとより深くこの物語りを理解出来るのではないかと思います。

© 2016 WIND RIVER PRODUCTIONS, LLC.

 

この物語りはこのウインド・リバーで野生生物局のハンターをしているコリーが一人のネイティブアメリカンの少女の遺体を発見する所から始まります。
そしてその事件の捜査にFBIからジェーンという女性捜査官が派遣され二人は事件の捜査を始めます。

このジェーンというFBI捜査官はネイティブアメリカン保留地の事をほとんど解っていない若者で、僕たち観客は彼女の目を通す事でこのウインド・リバーの過酷で異常な現状を知って行く事になります。

遺体で見つかったネイティブアメリカンの少女。
彼女の直接的な死因は検死の結果“窒息死”だった事が判明します。
なぜ彼女は周囲5キロ圏内に何もない雪原で窒息死していたのか。
それはこの土地が極寒の地である事が原因です。
マイナス30度にもなる気温の中で激しく呼吸をすると肺が凍りつき出血。
そしてその血が固まり呼吸が出来ず窒息死してしまうのです。
激しく呼吸をするだけで死に至るような土地。
僕たち日本人には想像も出来ませんし、それはウインド・リバーに到着した時に驚く程軽装だったジェーンにとっても同じでした。
そして、ジェーンは捜査を進める内にネイティブアメリカン保留地に蔓延するネイティブアメリカンの貧困などに起因する問題を目の当たりにする事になります。

この映画のシーンはほとんどが“白”です。
見渡す限り雪、雪、雪。
その雪と極寒の気温がネイティブアメリカン達の生活を阻む様子は、まるで白人がネイティブアメリカンをこの保留地へ追いやった事と重なるようにも感じます。
そしてそれは、広大な土地であるにも関わらず裏腹に漂う異常な閉塞感を感じさせます。

本当に異常。
まるでこの場所だけ世界から切り離されたような異質な空気。
その過酷な環境はそこに住む人々の精神にも影響を与え侵食し、閉じたこの地をある種の“無法地帯”にしてしまっているのです。

そんな今なお続くネイティブアメリカン保留地の深い闇とその異質な恐ろしさがこの映画からは濃く漂ってくるのです。

また劇伴も良く、特に山奥のトレーラーハウスに向かうシーンで流れる曲はとにかく不気味でこの映画の世界の不穏さをより際立たせていてしばらく頭に残りました。

美しい景色と閉塞感や不気味さのコントラストがとても印象的な作品です。
知りたくなかった、でも現実にある知るべき世界を垣間見てしまった作品でした。

 

 

 

⇩ここからネタバレ⇩

この事件の真相は、ネイティブアメリカンの少女とその恋人・マットが彼の同僚たちと喧嘩になった事が発端でした。
喧嘩の末、同僚たちは少女を強姦しマットを殺害します。
そして逃げ出した少女が気温マイナス30度の中を10キロも走り続けた事で肺が凍り窒息死に至ってしまいました。
その事件はこのウインド・リバーという地の呪詛のようなものなのかもしれないと僕は感じました。

外の世界から切り離されたこの土地と過酷な環境は人の中の“常識”を破壊してしまっていたのではないか。
この強姦と殺人は本当に些細な事がきっかけで起きてしまいました。
それはこの地に“隔離”されたてしまった犯人達が、その過酷で閉塞的な環境の中で理性や常識を麻痺させてしまっていた事が原因なのかもしれません。
そしてネイティブアメリカン達に対する差別意識や蔑みのような感情が彼らを獣へと変えてしまったように感じられました。

また、主人公・コリーの娘も3年前に今回のネイティブアメリカンの少女と同じような状況で亡くなっています。
そんなコリーは今回の事件を自分の娘の事件と重ねたかのように犯人の男達を、まるで害獣を駆除するかのように躊躇なく射殺します。
そして逃げ出した主犯格の男を捕まえネイティブアメリカンの少女と同じ環境におき死なせます。
それはまるで弱肉強食の世界。
まともに法が及ばないこの地で生きていくには、自らがハンターとして敵を狩らなければならない。
家畜の羊を狙う狼を駆除するように。
それこそがこの地の秩序を、そして自分たちを守る唯一の方法なのです。

© 2016 WIND RIVER PRODUCTIONS, LLC.

 

まとめ

人権と自由の大国アメリカに今なお強く根を張る大きな闇を描いた本作。
世界にはまだまだ自分の知らない問題がある事を知り、またその深い闇になんだか自分の世界の足元が揺らぐような怖さを感じました。
しかし、この世界で現実に起きている事をちゃんと知る事は大事な事だと思いますし、多くの人がそれらに対して意識を持つ事が世界を変える事に繋がるのかもしれませんね。

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